「ゼロクリック」という言葉、ご存じでしょうか?
言葉自体は結構前からあり、ChatGPTのようなLLM系生成AIが流行る前の2018〜19年頃から注目されるようになったものです。スニペットや店舗情報、地図などが内包されるようになり検索結果の画面だけで答えが完結するケースが増えていた頃ですね。
簡単に言うとGoogleで検索したけど、どのサイトにもクリックしない。検索結果に表示された情報だけで答えが分かって、そのまま検索を終える。そんな行動を指します。
ただ、この「ゼロクリック」という言葉、ここ数年で存在感が急上昇しました。
出典:Google Trends 検索語句zero-clickの世界トレンド5年推移 2026年9月現在
数値はGoogle検索における相対的な検索関心度を示すもので、販売数量や需要そのものを示すものではありません。
この記事を読んでいる時点で何となく理由は察しているでしょうし、自分でもやっていると思います。
Googleで検索すれば、AI Overviewが一番上で知りたいことをまとめてくれる。
それどころか最近では、最初からChatGPTなどのLLMに聞いてしまう人も多い。
そして正直なところ、毎回そこから引用元を確認して、本当に正しいのか事実確認している人なんて、そんなにいないでしょう。
知りたいことがある。
答えが出る。
はい、TikTokに戻る。
大体そんなものです。
僕らがやっているマーケティングコミュニケーション、特にPR(パブリック・リレーションズ)の仕事は、組織が伝えたいメッセージを、届けたい相手に届けることです。
時には、売上につなげるため商品の魅力を伝えたい。
時には、ブランドの好感度を上げるためにストーリーを伝えたい。
時には、幹部が不祥事を起こしてしまい、事実関係をちゃんと伝えたい。
まあ、色々あります。
以前なら、人は興味関心についてGoogleなど検索エンジンで検索して調べてたので、そこが狙い目になる事が多かったです。
表示された結果の多くは検索した事について書かれた記事コンテンツ。Google側も関連性が高く、クリックされるであろうと判断したサイトを上位に表示していた。検索者は自分で「これを読もう」と選んだり、いくつか開いて比較したり。
もちろん、その記者、編集者、ブロガーが見つけた情報が100%正しい保証なんてありません。でも少なくとも、人間が一度間に入って、明らかなデタラメや企業側の言い分を多少なりとも濾過するフィルターみたいな役割は果たしていました。
でも今は、AI Overviewに出た答えをそのまま受け取る。
そんな中で、考えないといけないのは『AIはあなたについてどう語っているのでしょうか?』
『だからLLMOをやれば良いんでしょ?』
言うのは簡単ですが、実際何をすればいいのかわかってる人、まだ少ない印象です。
ここで出てくるのがLLMO、Large Language Model Optimization -大規模言語モデル用最適化。
AIOとかGEOとか、似たような呼び方も色々ありますが、AIの回答で自社情報を適切に扱ってもらう対策で言うとLLMOが最も近しい定義です。
そしてこれを生成AI版のSEO、Search Engine Optimizationだと考える人も多い。
で、そこは少し違う。
SEOは、特定のキーワードで自分のサイトを検索上位に出して、サイトに人を連れてくるためのものです。自社名や商品名のような直接的なキーワードや、自社の商品が解決する悩みや、狙っている顧客層が検索するような間接的なキーワードがあり、それらと自社サイトを結びつける対策でした。
ザックリ言うと、
例えば冷蔵庫メーカーがあったとしましょう、
「冷蔵庫 大容量 野菜室 綺麗」
みたいな、具体的な検索ワードに合わせて、自社の野菜室が綺麗に保てる構造を説明するコンテンツを作ってサイトに載せる。その記事をアクセスの多いニュースサイトなどに紹介してもらう。
技術面は大部分省いてますが極端、やっていることはそういう事です。
SEO対策が商売に上手く機能したのは、人が最終的にクリックして、自分で確かめる必要があったからです。そして、その人はあなたのサイトに連れてこられた。そこならメッセージをコントロールできる。
ただ、今は違います。
AIが色んな場所から情報を引っ張ってくる。
AIが答えを整理して結論付ける。
そして、検索した人は、いちいちその事実確認をしない。
AIに上手く理解してもらい、語ってもらうためには何が必要なのか?
もちろん、自社サイトが不要になるわけではありません。何を売っているのか。誰に向けたサービスなのか。価格はいくらで、どんな実績があるのか。AIにとって企業自身が出す一次情報として、このコンテンツはとても重要な材料です。
ただし、それだけでは不十分。
AIはその一次情報を拾い、それをもとに様々なオンライン情報源と照合していきます。
例えばさっきの冷蔵庫メーカー、公式サイトに「私たちは、この領域で圧倒的な専門性があります」というコンテンツが充実していたとしましょう。
AIはあなたの一次情報を第三者発信などで信憑性を確認します。そしてユーザーの質問に対して競合ももちろん同様に調べ上げます。
競合のサイトにも「豊富な実績」「高い技術力」「手厚いサポート」が並んでいる。みんなすごい。じゃあ、何を根拠に情報を選定してユーザーに推奨すればいいのか。
そこで効いてくるのが、自社の外にある情報です。
業界メディアがその技術を取り上げている。顧客が導入後の成果を話している。専門家が、その会社ならではの強みを説明している。
でも、外部の記事で取り上げられるのは値引きキャンペーンばかり。SNSでも「安い会社」として話題になってる。技術力について具体的に語っているのは、公式サイトだけだったらどうでしょう?
「安く買える会社」として勧められるかもしれない。それは好意的な紹介ではある。でも、本当に獲得したかった評価とは違う。
伝えたかったことは伝わっていない。
「自分ではそう言っているけど、他の人もそう言ってる?」
欲しい評判につながる根拠を、自社発信以外で増やしていく必要があるのです。
実際米大手のPR会社Bursonが2026年初頭で実施した調査では、AIが引用する情報の約85%が独立した第三者メディアによる情報だと発表しています。
*出典:Beyond GEO
つまり、自社について言いたいことがあるなら、自社サイトに書くだけでなく、それを裏付ける情報も世の中に存在している必要があります。
一方でゼロクリックの話になると「AIのせいでサイト流入がめちゃくちゃ落ちている」という悩み話も最近よく寄せられます。
まずはオンライン販売をしていない事業者は、一先ず焦らなくて良いでしょう。
そのような事業で確認したいのは、
・生成AI上でちゃんと言及、引用されているか?
・その内容は適切な内容なのか?
・良い印象の残る言及になっているか?
例えば、飲食店やクリニックならば、周辺地域で探してる人数自体は変わっていない。
ただしAIの回答で営業時間や評判、サービス内容を把握できればAIの答えだけで十分納得してそのまま予約して来店・来院する。サイトを経由する必要はなかった。ノープロブレム。
ただし、ECをやっている皆さんは、もう少し切実な話ですよね。
全然関係ない検索からたまたま商品ページに流れ着いて、そのまま買ってくれる人。
そういう「偶然サイトを発見して買う」ような時代はもう終わりを告げつつあるでしょう。
ただ、ある程度ちゃんとECの戦略を作っているのであれば、そもそもそんなラッキーパンチが売上の主たる流入源ではなかったはずでし、あってはなりません。
じゃあ、どうするのか。
結局、見るべきものは同じです。
AI Overviewが見込み客に答えを出す。
その人は、そこで検索を終える。
でも、まだパニックになる必要はない。
コンバージョンは実際どうなっていますか?
例えば、以前は100人がサイトに来て、5人が買っていた。今は50人しか来ないけど、同じく5人が買っている。アクセス数は半分。でも、売れた数は変わっていない。
本当にサイト訪問者数が一番重要なKPIだったっけ?
むしろAIが自社の強みをうまく説明してくれているなら、いざ買うタイミングになった時のコンバージョンは上がるかもしれない。
何度も言いますが、
多くの人はAIが言っていることを、そこまで細かく検証しません。
残念ながら、「もう人が来ないなら、サイトのコンテンツも作らなくていいじゃん」とはなりません。自社に関する一次情報については、今でもAIが最初に確認する重要な場所です。
AIが読みやすいサイトにするための技術的なポイントも色々ありますが、その辺は今ならAI自体に聞けば教えてくれるでしょうから省略します。
一方で、昔のSEOのような、検索キーワードを狙うためだけのブログ記事を大量生産する必要は少し減るかもしれません。それは良いニュース。
その代わり、特にウェブの露出を中心にパブリシティについては、もっと戦略的に練る必要があるかもしれません。パブリシティって言うのは、PR業界で言う無償で獲得した、ようするに広告じゃない露出ですね。
広告は昔から一過性なもので中長期評判を探るAIには不向きです。そして自社発信だけではお客様に情報が届かなくなったならば、他の人にあなたについて話してもらう必要があります。
・メディア記事
・SNSやコミュニティでの発言
・ブログやノート
・Wikipediaや知恵袋など情報源
AIが読める場所ならほとんどがその対象となる。
ただし、
話してもらえば何でもいいわけじゃない。
そこに、自分たちが伝えたいメッセージが入っていないと意味がない。
じゃあ、一体どうやって他の人に、自分たちについて話してもらうのか。
シオンは長らく提唱しているマーケティングの三大分類のAD (Advertising)、SP (Sales Promotion)、PR (Public Relations)のうち、SPは販促活動なので置いといて
ADは「俺ってすごいでしょ」を発信する手法
PRは「あいつってすごいよね」を仕込む手法
誰かに無償で語ってもらう以上、その対象に発信したくなるような情報を与えているのか。どのようなFact(事実)、Benefit(価値)、Opportunity(機会)を提供しているのか。ターゲットに刺さる人に言ってもらおうとしてるのか。その人にとって発信すべき理由はちゃんと設計しているのか。
まずは小さな行動から積み上げていけば、いつかはAIが信頼できる情報の山として積もっていくかもしれません。
この辺りは、弊社が定期開催しているセミナーでも学べますし、いつでも無料相談できますのでお気軽にご連絡ください。